漫画製作日記

漫画家が「売る」とはどういうことか?

専業の漫画家は売らないと、漫画で自分自身を養っていくことができません。
他者からの施しがあれば、この世界で生存できます。

さて、この漫画家の「売る」ということは、どういうことかを考えてみたいと思います。

シンプルに考えれば、描いた漫画を「売る(キャッシュと交換する)」ということになりますが、抽象度を上げてつまりどういうことかを定義してみたいと思います。

漫画は、読者がいなければ「意味」がありません。
では、どんな読者でも良いのかというと、そうでもありません。

18禁向けの作品であれば、必然的に読者も18歳以上になります。つまり、売る前から「読者」を絞り込んでいるのです。

ポケモンであれば、年齢層もかなり下がります。なので、あまりエロくはできないわけです。

読者を絞り込んだだけでは漫画は成立しません。
読者が作品を読もうとするには、次の要素が欠かせません。

「絵が理解でき」て、「興味がある話」であることです。

「絵が理解でき」は、作画が安定していることは必須ですが、ある一定水準をクリアし、読者の視覚を満足させるレベルである必要があります。

「興味がある話」は、読者が求める「新しい世界観」を提供できるかです。これは、読者が求めない世界観では、「ツマラナイ」という判断が下るからです。

日本は、漫画世界一と思いますが、その理由は、日本人が様々な世界観を許容できる宗教観を持っているからだと思います。それは、「無宗教」と発言する人(宗教音痴)も含めての宗教観です。

世界の標準的な考え方では、日本のように様々な世界観が許容されることは無いでしょう。ですので、読者の宗教観をある程度見極めて、著しく異なる作品は「ツマラナイ」もしくは、「禁書」扱いになるということです。

また、世界観というのも抽象度を下げて、見たいと思います。
世界観=この世界とは何なのかという定義と考えると、その定義の違いが、人間社会の様々な問題を生み出しています。抽象度の高い順でいえば、そのカテゴリーのトップは宗教です。そして、言葉だったり、地域だったり、活動だったりします。これは、生活レベルまで抽象度が下がります。

自分の場合は生活となりますが、他人の生活の断片は一つの「ストーリー」になるでしょう。そして、小説や漫画などの作品には、他人の生活の一部が必ず描かれています。

そして、その人間もしくは、その周りの人間に興味を持つような魅力があれば、読者はストーリーの続きや、関連ストーリーが気になります。

他にも要素は、山ほどありますが、他の要素を排除して、その一部を乱暴に切り抜いて一言でいえば、「未知の魅力的なストーリー」となるでしょう。

少々話がそれましたが、漫画家が「売る」ということを「まとめ」ると次のようになります。

①読者を選定する
②安定した作画で未知の魅力的なストーリーを読ませる

もちろん①と②をつなぐには、編集者や出版者、そして販売者の力を借りることは言うまでもありません。一連のサプライチェーンを無視してはやはり売ることはできないのです。

漫画のサプライチェーンを考えると、次のようなものかと思います。
1.漫画を企画する
2.ストーリーを書く
3.漫画を描く
4.編集する
5.製品化する(印刷、もしくはデータ化)
6.宣伝する
7.流通させる
8.販売する
9.作品を読む

1~3までが漫画家
4が編集者
5が印刷所(電子の場合は、ソフトウェアで対応)
6が広告代理店、メディア等
7が問屋や物流業者(電子の場合はアマゾン等)
8が店舗(電子の場合はアマゾン等)
9が読者

もちろん1~6までを漫画家自身が行うこともあります。とにかく、1~3をやるわけです。
そして、その1~3には、

①読者を選定する
②安定した作画で未知の魅力的なストーリーを読ませる

 

が含まれています。
①と②を行い、読者を増やし、多くの作品を読者に提供することが漫画家の「売る」という仕事になります。

漫画家の「売る」こと=①+②

忘れないようにしたいですね。

Saitoon